2025年10月14日(火)開始 2025年10月27日(月)読了
作品情報
タイトル 汚れた手をそこで拭かない
著者 芦沢央
シリーズ
初刊出版社 文藝春秋
レーベル
発売日 2020年9月26日
初刊発行日
書籍情報
出版社 文藝春秋
レーベル 文春文庫 あ-90-2
判型/ページ数 文庫判/288ページ
発売日 2023年11月8日
初版発行日 2023年11月10日
版数 第11刷
発行日 2024年12月20日
定価(本体) 700円
購入日 2025年9月21日
【あらすじ】
平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、元不倫相手を見返したい料理研究家…
きっかけはほんの些細な秘密だった。
保身や油断、猜疑心や傲慢。
内部から毒に蝕まれ、
気がつけば取返しのつかない場所に立ち尽くしている自分に気づく。
凶器のように研ぎ澄まされた“取扱い注意”の傑作短編集。

詳細は下記の通り。
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ただ、運が悪かっただけ 50台の十和子は、幼い頃から理屈っぽい性格でどんなものごとにも意味づけをしたくなる。末期がんで余命いくばくもない現在も、自分の過去についてもこうすればよかったとか、ああすればよかったとか思いを巡らせている。そんな中で、残される無口でおとなしい夫に何か残せないかと思い立ち、夫が囚われている過去の忌まわしい記憶を、自分が死ぬときに持っていくことを提案する。夫は、「俺は昔、人を死なせたことがある」と語り始める。その話を聞いた十和子はその真実を理詰めで考え、夫の肩の荷を降ろす結論に導く・・・
埋め合わせ 教師の千葉秀則は、夏休みに自分のミスでプールの水を流失してしまう。過去に同じことをして多額の水道料金を弁済したという過去の記事を見て、このことを隠蔽しなくてはと考える。いたずらによって水を出したままになっていたということで様々な工作を試みるが、同僚の五木田に感づかれてしまう。しかし、五木田はそれを報告せずに秀則に隠ぺいの協力を申し出る。五木田のその目的は・・・
忘却 武雄の住むアパートの隣室の笹井三男が孤独死した。暑い時期に電気代を滞納していてエアコンをつけずに昼寝をしていて亡くなったらしい。それを聞いた武雄は、自分のところに誤配されていた笹井宛の電気代滞納通知を認知症の妻が笹井に渡すのを忘れたことを思い出す。妻はそのことを覚えていなかったが、武雄はいつ思い出すか気が気ではなかった。そんな時、自分の家の電気代が急に安くなったことから、笹井のしていたことが明らかになる・・・
お蔵入り 無名映画監督の大崎祐也は、ベテラン俳優・岸野紀之の出演許諾によって、やっと大きな映画作品を撮るチャンスを得ていた。岸野の役に入り込んだ演技により、撮影は順調にクランクアップした。しかし、そんな時に岸野の麻薬疑惑が持ち上がり、大崎とプロデューサーの森本は真実を岸野に詰め寄る。映画が上映中止になってしまうと感情的になった大崎は岸野をベランダから突き落としてしまう。岸野と共演の若手・小島郁人が口論していたというある女性の証言から、殺人の疑いは小島に向けられる。小島が犯人になってしまうと映画上映できなくなると思った大崎は、証言者の女性の嘘を暴きに会いにいくのだが・・・
ミモザ 料理研究家の荒井(市川)美紀子は、サイン会で昔付き合っていた瀬部庸平と再会する。瀬部とは9年前にアルバイトで働いていたオフィスで出会い、紀美子は妻帯者である瀬部と付き合っていたが、紀美子が瀬部の妻に会いに行ったことから関係が途絶えた。紀美子はなぜ瀬部が今頃会いに来たのかを訝しがるが、呼び出しに応じてしまう。瀬部の目的がお金だとわかった時には、結婚していた紀美子には瀬部の存在が恐怖になっていて断れなくなってしまっていた。ある日、瀬部は紀美子の住む部屋を訪れいつものようにお金をせびるのだが、その時に紀美子の夫が帰宅する・・・
【感想】
書店で見つけて背表紙に書かれた内容を読んで面白そうと思って買った作品です。

短編5作ということで読みやすい作品ではありましたが、人の追いつめられた心理状態を少しの恐怖を添えて描かれているということで共通しています。客観的に見ると愚かな行動と思ってしまうところもありますが、自分がそれぞれの主人公だとしたら、誰にでもこういう心理状態になってしまうということはあり得るかもしれないと思ってしまいます。また、思い込んでしまう危うさも感じます。そういうことを感じさせてくれるストーリーと表現方法は素晴らしいとは思いますが、読んだあとの意外性や納得感や満足感のようなものは微妙です。人間の怖さや陰湿な思いを引きずったままのエンディングなので、読んで面白かったとかいう前に、そのあとどうなるのだろうという感情の方が先立ちます。

最後の「ミモザ」では、瀬部に紀美子は「夫は優しい人で、冷蔵庫の中の腐ったものを見つけると、私の知らないところで捨ててくれる」と話したので、その言葉で私は、紀美子の夫が腐った瀬部を紀美子が知らないうちに処分してしまうというオチを推測していたのですが、実は夫も冷たく怖い存在だったというオチということだったので、この作品は、私の望むようなサスペンスではなく、人間のリアリティ、つまり不完全さや怖さや醜さ等を描いた作品なんだなと思いました。

それなりに味わい深い作品でしたが、ちょっと私の好みとはベクトルが違うかなと感じる作品でした。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。