2026年2月16日(月)開始 2026年2月18日(水)読了 (3日 5時間6分)
作品情報
タイトル ほどなく、お別れです 思い出の箱
著者 長月天音
シリーズ
初刊出版社 小学館
レーベル
発売日 2022年7月22日
初刊発行日 2022年7月27日
書籍情報
出版社 小学館
レーベル 小学館文庫 な-38-4
判型/ページ数 文庫判/352ページ
発売日 2025年5月2日
初版発行日 2025年5月7日
版数 初版第7刷
発行日 2025年12月17日
定価(本体) 750円
購入日 2026年1月29日
【あらすじ】
美空がスカイツリー近くの小さな葬儀場「坂東会館」に入社して二年。訳あり葬儀ばかり引き受ける葬祭ディレクター・漆原の助手をしながら、研鑽を積む日々だ。繁忙期前のある日、坂東会館に社長の甥、小暮が入社する。彼が推進する効率重視の業務改革に対し、反発する美空たち。だが、やがて小暮の信念の源もあきらかになり・・・

火災で祖母と孫を亡くした家族、夫の遺体を焦るように群馬から東京へ搬送した妻、母の葬儀に離婚した父を呼ぶかで苦悩する年若き兄妹。「別れ」と懸命に向き合う人々の姿に、あたたかな気持ちと涙があふれるお葬式小説、第三弾・・・

詳細は下記の通り。
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プロローグ 久しぶりに会った親友の白石夏海に彼氏ができたという。二年目の繁忙期が始まろうとしていた・・・
第一話 思い出の箱 高齢男性・守屋正二が団地で孤独死。その老人の部屋は雰囲気が明るく清潔な部屋だった。静岡に住む嫁いだ娘は、父親をひとりにしていたことを悔やんでいた。その部屋で美空は犬の餌を見つける・・・
第二話 未来の約束 坂東会館にやってきた社長の甥、小暮の業務改革で坂東会館は揺れていた。美空は演出過剰ということで遺族からクレームを受けていた。そんな時、漆原と美空は、商店街で住宅火災で亡くなった祖母・海老沼豊子と孫・海老沼航のふたりの葬儀をおこなうことになった。義母と息子と思い出の家を同時に亡くした娘・綾はふたりを助けられなかったことで自分を責め、葬儀に向き合えなかった・・・
第三話 故郷の風 群馬で登山中の夫婦、そこで夫・倉持明夫(65歳)が足を滑らせて亡くなった。ふたりは夫の定年後の楽しみに夢を抱いていた矢先だった。妻の京子は、夫の故郷が群馬でありながら、夫の遺体を住んでいる東京に戻すことを急いだ。通夜の日、会場に群馬の親戚が現れ、そこで京子と明夫の姉が明夫を思うあまりぶつかるが、そこで明夫の思いが美空を通じて語られる・・・・
第四話 絶対の絆 小暮のせいで漆原は坂東会館を去るかも知れない危機を迎え、美空はそれが気が気ではなかった。そんな時、息子と娘を女手一つで育てた46歳の長野圭子の葬儀を担当することになった。喪主は21歳の息子・翔一で、彼は借金を作り家族を捨てた父親・を憎んでいた。葬儀の日、そこに別れた父親が現れた。美空は会場に案内し、そこで翔一は父親に反発するが、妹の玲奈から意外な事実を告げられる・・・その式を見ていた小暮は、今までの坂東会館のやりkたに理解を示していく。そして小暮の隠された過去と葬儀への思いを美空たちは知ることになる・・・
エピローグ 夜の隅田公園、小暮の歓迎会という名目で坂東会館のスタッフが集まっていた。大切な人は自分だけの大切な人ではない、そんな大切な人を送ることの難しさを美空は漆原と小暮の話から心に刻む・・・
【感想】
2月6日公開の映画「ほどなく、お別れです」のシリーズ小説、第3弾です。

今回の作品は、今までの2作と違って読んでいて涙が流れて困るというものではありませんでした。もちろん、それぞれの家族の話は考えさせられて心に響くもので涙が流れてきますが、それよりも、小暮の登場により、葬儀とはどういうものであるべきなのか、何が故人や遺族のためになるのかということを考えさせられました。また、この作品を読んでいると、漆原と美空の葬儀が理想的なものに感じてしまい、現実の葬儀社とのギャップや不満を感じることもありましたが、そういう問題も小暮を通して考えさせられます。

小暮千波という人物は、最初は鼻持ちならぬ人間で坂東会館では異端のように描かれますが、実はその背景に小暮の大切な人を自分の思いで送ることができなかったという悲しい出来事があり、基本的な考え方は漆原や美空とは変わらなくて、最終的には坂東会館の一員として認められるという終わり方になっているのは救われます。

この作品の第四話が映画「ほどなく、お別れです」に採用されていますし、映画での漆原の奥さんのことは、小暮のことを重ねているのかなと思います。第四話は、基本的なところは同じですが、映画的に盛り上がるようにかなり異なる描き方をしています。私は地味ですが小説版の内容のほうがリアルで好きです。

自分が死ぬときは、遺族が戸惑ったりいがみ合ったりしないように、自分の考えをしっかりと残すことが大切なことだとあらためて思います。その死ぬときは突然にやってきたりすることも普通にあり得るので、先に延ばすのではなく、しっかりと大切な人に自分の思いを普段から伝えておかなくてはいけないということも痛感します。

我々は、身近な人の死というものは、そんなに遭遇して経験するものではありません。こういう小説によって、だた泣ける物語で感動したということだけで済ますのではなく、いろんな人の死や残された遺族の気持ちに触れることによって、自分自身や身近な人の死についての備えをしていくことができるのかなと思います。「ほどなく、お別れします」の原作もあと一作になりました。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。